ITアウトソーシングとは? 活用例やメリット、導入手順などを解説
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IT活用が進む昨今、情報システム部門(情シス)が担う役割は年々多様化し、業務も増加しています。この状況を変える手段として注目されているのが「ITアウトソーシング」です。この記事では、ITアウトソーシングの概要やメリット・デメリット、ITアウトソーシングを活用すると効果的な業務例、導入手順などについて解説します。
ITアウトソーシングの意味は??
ITアウトソーシングとは、企業のIT関連部門で行っている業務の一部または全部を外部委託することです。近年多くの企業は、新しいIT技術やサービスを積極的に取り入れることで、生産性の向上を図ろうとしています。しかし、働き方改革や「2025年の壁」問題などの影響もあり、業務過多や慢性的人手不足などの課題をIT関連部門で抱えるケースも多々発生しています。
中でも毎日のいわゆる「ノンコア業務」をいかに効率化するかが、多くの企業で課題になっています。そこで、課題解決の手段として注目されているのが、ITアウトソーシングの活用です。専門業者にノンコアのIT業務を委託することで、当該業務の効率化やコスト削減が期待できます。結果、ビジネス活動の促進やビジネス価値の向上につながる「コア業務」に、自社リソースを注力しやすくなります。
ITアウトソーシングを活用すると効果的な業務例

企業における情シスの業務は、IT機器の管理・運用、社内向けシステムの開発・保守・運用、セキュリティ対策など多岐にわたります。その中でも外部委託の活用で業務効率化が期待できる業務を3つ紹介します。
システム保守・運用
システム保守とは、故障や不具合などのシステムトラブルが発生した際に復旧作業を行う仕事のことです。一方のシステム運用はシステムが常に安定して稼働できるように管理・運用する業務のことです。
企業にとってシステムの停止は、大きな損失につながる可能性が高いため、非常に重要な業務です。しかし、どちらの業務も24時間365日稼働しているシステムに対応する必要があり、システムに対する深い知識と経験が求められます。
これらの業務でITアウトソーシングを活用すれば、情シスの業務負担が軽減でき、コア業務に回すこともできます。また、システム保守と運用を任せられるだけの知識を持つ優秀な人材に依頼できるため、システムのガバナンスが強化でき、人材の雇用や育成の必要もなくなるため、ITコストの削減も見込めます。
ヘルプデスクサポート
ヘルプデスクとは、社内や顧客からの問い合わせに対応する業務のことです。企業に寄せられる問い合わせの内容はさまざまで、社内からはIT機器の操作やトラブルなどに関する問い合わせ、顧客からはサービスに関する質問やクレームなどが届きます。
特に情シスでは、IT関連業務と従業員からの質問対応を兼務していることが多く、それが業務負担の原因になっていることも少なくありません。とはいえ、社内で専任担当者を配置しようにも、IT人材の不足や人件費などの問題から専任担当を配置できない企業がほとんどです。
そこで近年ではこの解決方法として、ITアウトソーシングに頼る動きが多く見られます。外部委託することで業務負担が軽減でき、本業に注力できるため、業務の効率化につながります。また、ヘルプデスクのプロに委託することで対応スピードの短縮が期待でき、顧客満足度の向上にも貢献できます。
セキュリティ対策
IT技術の進歩とともに日々進化するサイバー攻撃は、企業にとって無視できない大きな問題です。もしも被害にあえば、社会的信用の失墜やビジネスの機会損失など、さまざまな損害が発生します。そのため、企業にとって最新のセキュリティ対策は大切な情報資産を守るうえで必要不可欠です。
しかし、自社で十分なセキュリティ対策するには、ITスキルはもちろん、最新のセキュリティ対策方法の知識などまで求められます。そこで活用したいのがITアウトソーシングです。
ITアウトソーシングを活用すれば、セキュリティ機器の導入をはじめ、セキュリティ対策状況の監視、定期的なセキュリティ診断、脅威情報の収集・分析など、最新のセキュリティ体制を導入できます。また、高度な専門知識を持つ委託業者にアウトソーシングすることで、社内システムの安全性向上の実現も可能になります。
ITアウトソーシング導入メリットや解決する課題

IT関連業務を外部委託することで、以下のようなメリットを得られたり、今まで企業が抱えていた課題を解決できたりします。
ノンコア業務を削減し、コア業務に集中できる
近年、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が注目されていることで、情シスの業務が増えています。しかし、実際は情シス業務の多くがノンコア業務であり、コア業務に注力できていません。
株式会社ソフトクリエイトが公表している「情報システムの現状とIT活用実態アンケート 2023」によると、もっとも時間を使っている情報システム業務は、「システム運用・保守・報告」が42.1%、「問い合わせや障害対応」が30.6%でした。そして近年、この順位に大きな変化はありません。
これらノンコア業務が情シスの業務の足かせになっている事実が、この結果からわかります。したがって各企業には、コア業務に集中・注力するには何らかの対策が必要です。
こうした背景もありITアウトソーシングが注目されています。ノンコア業務を外部委託することで、利益の創出につながる重要なコア業務に自社人材・リソースを集中できます。
参照元:株式会社ソフトクリエイト「情報システムの現状とIT活用実態アンケート 2023」
https://go.softcreate.co.jp/enterprise-it-management-survey-report-2023-2.html
人件費や設備などのコストを削減できる
ITアウトソーシングを上手に活用することで、自社のIT技術を支えるために必要な人員が削減できます。また、ITアウトソーシングによってコア業務に集中でき、売り上げアップや生産性向上が期待できれば、相対的に人件費のコスト削減につながります。
さらにノンコア業務を委託することで、IT人材の育成や採用に費やすコストの削減も可能です。委託した内容次第では、業務に必要なIT機器やソフトウェアなどを自社で維持する必要がなくなるため、設備費などもコストカットできます。
最新の専門知識に触れられる
IT関連業務では、さまざまなスキルと専門知識が必要です。また、IT技術は日々進歩しているため、システムトレンドをいち早くキャッチし、セキュリティ対策などに活かすことが求められます。
そこでITアウトソーシングすることで最新の専門的な知識に触れられ、自社の事業に活かすことも可能です。さらに専門家の知識が借りられるため、最新のIT技術を使ったシステム選定や構築ができ、強固なセキュリティ対策やガバナンス強化も目指せます。
ITアウトソーシング導入のデメリットや注意すべき点

ITアウトソーシング導入はメリットだけでなく、デメリットももちろん存在します。
外部委託先に依存する可能性がある
何もかも業務委託してしまうと、自社で技術や知識、ノウハウを蓄積できなくなる可能性があります。外部委託に依存する状況になり、自社のIT担当者から多くの業務経験の機会を奪ってしまえば、社内でITエンジニアが育ちづらい環境が生じます。さらに依存度が高くなると外部委託なしでは業務が回らなくなり、技術的な問題への解決が委託先任せになってしまいます。
依存に陥らないためには、社内でも技術的な問題に対応できるように、知識やノウハウを蓄積できる体制を作ったり、トラブル発生時の対処方法などを記録で残したりしておきしましょう。また、継続的に依頼することを想定して、導入時には業務をどこまで委託してよいのかよく検討することが大切です。
費用やコミュニケーションなど追加コストがかかる
先ほどITアウトソーシングによって人件費や設備費などの諸経費が抑えられると述べましたが、場合によってはコスト削減ができないばかりか、追加コストがかかるおそれがあります。
例えば、自社に合っていない充実したサービスを契約すれば、予想以上のコストがかかる可能性があります。また、業務の引き継ぎや問題点の調査などに伴い、料金プランとは別の費用を支払ったり、何度も依頼先とコミュニケーションを重ねたりする必要も生じます。
対策としては自社に合った委託先を選択し、業務範囲などを把握してトータルで予算を超えないかを確認することが大切です。
セキュリティリスクがある
ITアウトソーシングをすると、委託先に社内の機密情報へアクセスを許すことになります。そのため、社内で対応しているときに比べてセキュリティリスクが上がります。
委託先を決める際は、委託先のセキュリティレベルや情報の取り扱い方を確認したうえで、共有する情報の内容とその範囲、責任の所在を明確にしましょう。
責任範囲があいまいなまま契約してしまうと、情報漏えいなどの発生時にどちらが責任を取るのかでトラブルになる可能性があります。そのようなトラブルを防ぐためにも、ITアウトソーシングでは、ITサービスの品質水準を明確にする「SLA(サービスレベルアグリーメント)」を締結しましょう。
SLAは、業務範囲や条件、責任、サービスレベル、報告ルールなどを定め、双方の責任範囲を明確にする取り決めのことです。締結により、一定の品質が約束されたサービスを受けられること、サービスに対して支払うコストの妥当性が明確になることなど、さまざまなメリットがもたらされます。
ITアウトソーシングの導入手順
外部委託は適切な手順を踏むことで、失敗を回避できます。ITアウトソーシングを成功させるために、以下の手順に従って慎重に進めましょう。
自社課題の把握と目的の明確化
まずは自社が抱える課題を把握し、ITアウトソーシング導入の目的を明確にします。例えば、「IT人材が慢性的に不足している」「社内のIT人材をコア業務に集中させたい」「ITにかかるコストを抑えたい」「新しい技術を適切に取り入れたい」など、具体的な課題や目的を挙げていきましょう。
現時点での課題や目的が明確になったら、次に何の業務をどのくらい外部委託するのかを決めます。このとき、委託に向いている業務と向かない業務がある点も考慮するとよいでしょう。
ノンコア業務のうち、マニュアル化できる日常的な業務や専門性の高いIT業務は、特に外部委託向きと考えられます。一方、その時々で処理方法やルールが変わる業務は向いていません。方法が変更されるたびに、委託先に伝える手間が生じるからです。また、機密性の高い業務や経営に関わる業務も、情報漏えいなどのセキュリティリスクが高いため、委託は避けた方が無難です。
さらにこの段階で委託先を決めるうえで必要な予算や情報の整理を行いましょう。
委託先の選定と契約
事業者によってスキルレベルや料金体系が異なるため、委託先の選定は非常に重要です。安さだけで判断せず、委託予定の業務をこなせる技術力、信頼性・実績、サポート体制の充実度などに着目し、総合的に判断して決めましょう。
また、情報漏えいのリスクを下げるためにも、委託先のセキュリティ体制もチェックすることが大切です。適切な情報管理体制があるかどうかも、委託先を決める材料になります。
気になる委託先が数社ある場合には、それぞれの業者から見積もりを取って比較し、価格ではなく費用対効果を考えて委託先を決めましょう。
業務の移管
委託業者と契約して業務内容のすり合わせが終わったら、業務の引き継ぎを行います。委託する業務内容によって手順は異なりますが、一般的には業務を移管するためのマニュアルや注意事項などを作成し、テスト運用を行います。
この時点で問題があれば改善策を見つけ出し、再度テスト運用を行い、問題なければ本格的に運用を開始します。
継続的な評価
システムの本格運用が始まったあとは委託先にすべて任せるのではなく、業務を監視しつつ、定期的に効果検証も実施します。適切に業務が行われていたか、期待した効果があったかどうかを確認してください。
これら検証で、気になる部分などを見つけたら、委託先に要望や疑問を細かく伝えましょう。特に導入直後はトラブルが発生しやすいため、委託先と密に連携を取り合うことが大切です。
まとめ
ITアウトソーシングとは、企業にあるIT関連業務を外部委託することです。業務を委託することで、情シスの業務負担の軽減やIT関連業務のコスト削減につなげられます。また、高度な専門知識に触れられ、最新のセキュリティ対策を導入できるだけでなく、自社の事業に活かすことも可能です。
ITアウトソーシング導入の際は、技術的に解決したい課題を明確にしたうえで、「自社のビジネスや企業活動に、そのアウトソーシングがいかに貢献するか」を基準として、依頼先を選定してください。こうした基準設定は、新しいITサービスやシステム、ソフトウェアを導入する際にも有効です。Y2Sが提供する「OpsRamp」は、セキュアな環境で多数のITシステムを一元管理できる、SaaS型クラウド運用管理サービスです。社内のインフラ運用課題の解消や業務効率化などに貢献してくれるため、今のITシステムに問題や課題がある場合には、導入を検討してみてはいかがでしょうか。