内製化のメリット・デメリット!よくある失敗とは?

  • 内製化
2023.07.14
内製化のメリット・デメリット!よくある失敗とは

企業にとって内製化は重要な経営戦略のひとつです。しかし、企業の経営状況や事業形態によっては必ずしも内製化が最適解とは限りません。そこで本記事では内製化のメリット・デメリット、内製化すべきか否かの判断ポイントなどについて解説します。あわせて陥りがちな失敗事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

内製化とは社内でシステム開発・運用を行うこと

「内製化」とは、外部の法人や個人に委託していた特定の業務を、自社のリソースで行うように切り替えることです。例えば、ITシステムを導入する際には、「導入計画の策定」にはじまり、「業務要件・システム要件の定義」→「外部設計・内部設計」→「実装」→「テスト」→「運用」といった複数の工程を段階的に進めていくことが一般的です。このようなプロセスを自社の経営リソースで行うようにすることを内製化と呼びます。

内製化とは逆に、特定の業務を外部委託で実施することを「外製化」と呼びます。外製化では多くの場合、アウトソーシングや業務委託などで業務を進めます。近年、特に国内ではITシステムの開発・運用などの業務を外製化する企業が増加している傾向にあります。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2023年2月に発表した調査によると、米国企業の53.1%がコア事業領域のITシステムを自社開発しているのに対し、国内企業の内製化率は24.8%にとどまっています(※1)。ITシステムに関わる業務を内製化できれば、委託コストの削減や機密情報の流出リスクの最小化、さらには品質管理の一貫性の確保といったメリットが得られます。

参照元:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」p.123(※1)
https://www.ipa.go.jp/files/000108041.pdf#page=132

内製化のメリットとデメリット

内製化のメリットとデメリット

ITシステムの開発や運用に関わる業務を内製化するのか・外製化するのかは、自社の経営状況を踏まえながら慎重に判断しなくてはなりません。ここではまず、内製化のメリットとデメリットについて解説します。

メリット

ITシステムの開発・運用を内製化するメリットのひとつは、業務を進める過程で社内にナレッジが蓄積されることです。例えば、自社システムの設計・開発を内製化することにより、ソリューション開発における知識や経験がデータベースに蓄積されます。蓄積されたナレッジによって、より高品質なシステムの設計・開発が可能になるだけではなく、プロジェクト内で発生した問題に対して、社内のエキスパートが迅速かつ的確に対応できるようになります。
逆にITシステムの設計・開発を外製化することは、ブラックボックス化のリスクを含んでいます。したがって、何らかのインシデントへ臨機応変に対応できる環境などを、自社内で整備しにくい状況が生じます。

内製化によって開発速度が向上することもメリットのひとつです。先述したように、ITシステムの導入には、計画策定からテストまで数多くの工程がありますが、内製化できれば各工程での問題や修正点などを発見・共有しやすく、開発速度の向上が期待できます。オンプレミス型システムであれば、ITインフラの継続的な保守・運用も必要であり、保守・運用面での対応も迅速に行えます。

さらに、システム開発・運用の内製化には、問題点に対して改善策を柔軟に実行できるようになるというメリットもあります。外製化の場合には、意思疎通の齟齬からスケジュールに遅延が生じたり、課題や問題を把握しきれずに、対応が後手に回ったりといったリスクが懸念されます。内製化しておけば、すべてを社内で検討・対応できるため、高い柔軟性を維持可能です。

デメリット

ITシステムの開発・運用を内製化する場合のデメリットのひとつに、人材育成に時間がかかってしまうことが挙げられます。ITシステムの設計・開発には、エンジニアリングやプログラミングの分野に精通したIT人材や、デジタルソリューションの導入・運用プロジェクトを総合的に管理し得る、マネジメント能力に特化した人材も必要です。こうした高度な知識やスキルを有するIT人材を社内で育成することは容易ではなく、相応の時間・費用をかけねばなりません。

さらに現代はビジネススピードが増す一方であり、新事業への参入や既存事業の見直し・撤退といったことが頻繁に起こり得ます。事業の変化によって、システム開発・運用の業務量は急増したり、急減したりと、大きな影響を受けます。こうした影響下でも、アウトソーシング活用により、必要なときに必要なスキルの人材を、必要な数だけ調達することが可能です。
しかし自社だけでは、急激なエンジニア需要の変化に対応することが困難なケースも少なくありません。人員不足については、一時的・部分的なアウトソーシングでしのげるかもしれません。しかし人員過剰については、即座に人員数を調整することはきわめて困難です。

内製化による三番目のデメリットは運用コストがかかることです。ITインフラの保守業務や運用・管理には相応のリソースを投じる必要があります。特にオンプレミス環境でITシステムを運用している場合には、サーバーやストレージ、ネットワーク機器、電源装置、冷却設備などの機器・設備そのものの費用がかかるうえ、継続的なメンテナンスが必要であり、それらに応じた人件費も加算されてきます。内製化することによってITシステムの設計・開発コストは削減できますが、逆に運用コストはアウトソーシング化・クラウド化に対して増大する可能性が高いと考えられます。

システム内製化のよくある失敗

システムの内製化は外製化と比較してナレッジの蓄積や開発スピードの向上といったメリットがあり、企業にとって非常に魅力的な選択肢です。しかし、内製化にはさまざまなリスクや課題もあり、失敗するケースは少なくありません。ここではITシステム内製化による、よくある失敗事例について解説します。

システム運用が属人化してしまう

IT人材の担当業務は属人化してしまうことが多く、中小企業では一人のエンジニアに運用・管理をまかせる「ひとり情シス」が常態化しているケースも少なくありません。ひとり情シスのような組織体制では、担当者の不在時に障害が発生した場合、対応が後手に回ってしまいます。IT人材が退職・休職すれば、ITシステムを運用・管理することが困難になり、事業活動の継続に支障が生じる可能性もあります。

さらに特定のエンジニアが長期間、同じ業務に携わり続けることが多くなる結果、システム仕様などのドキュメント化が放置されてしまうこともあります。「内製化であるにもかかわらず、システムがブラックボックス化している」といった状態になりかねません。万が一の場合にはMSP(マネージドサービスプロバイダ)に運用・管理を依頼する必要が出てきます。こうなってしまってはメンテナンス効率・コスト効率は落ちていかざるを得ません。

満たすべき品質に達していない

ITシステム開発をゼロから行う「フルスクラッチ」の場合、高度な技術力を有するIT人材と開発規模に応じた資金力が求められ、この2つがそろわなければ満たすべき品質は得られません。十分なリソースを確保できないままフルスクラッチ開発をはじめてしまった結果、いつまでも要件を満たすことができないか、未完成のままプロジェクトが頓挫してしまうケースもあります。
システム開発では、運用開始後もビジネスニーズの変化に応じた継続的な改善が必要です。仕様の変更や要件の見直しにもコストが必要であり、自社のリソースのみでシステムの品質を満たすことは簡単ではありません。

開発者とユーザーの意思疎通ができていない

システム開発を内製化するうえで課題となるのが、組織内のコミュニケーションです。業務要件を満たすシステムを開発するには、ITシステム運用部門が求める仕様を、開発者側が理解し、それら要求仕様を具体的な業務要件とシステム要件に落とし込まなくてはなりません。
情報システム部門(開発者)とITシステム運用部門(ユーザー)との意思疎通に齟齬が生じていることから、大規模な仕様変更や機能追加を余儀なくされた事例も少なくありません。このようなケースではプロジェクトが破綻してしまうことすらあり得ます。いかにして情報システム部門とシステム運用部門との意思疎通を円滑化するかは重要な問題です。

内製化とアウトソーシングの判断ポイント

内製化とアウトソーシングの判断ポイント

業務の内製化と外製化とにはそれぞれ一長一短があり、どちらが適しているかは企業を取り巻く環境によって異なります。内製化するか・外製化するかの判断で迷っているのであれば、以下に挙げる3つの要素を意思決定の基準とするのがオススメです。

コスト

内製化をする場合、IT人材の採用・育成コストとITインフラへの設備投資が必要です。一方で外製化の場合はMSPやSIerへの外注コストが発生します。具体的なコストはITシステムの開発規模によって異なり、内製化と外製化とでそれぞれのコストを算出し、両者を比較・検討したうえで判断を下す必要があります。
ここで重要なのは短期的な損得で判断するのではなく、中長期的な投資戦略に基づいて判断することです。企業が持続的に発展していくためにはコアビジネスへの戦略的な投資が求められます。ITシステムの開発・運用といったノンコア業務はMSPやSIerに委託すべきかもしれません。

期間

ITシステムの開発期間も、内製化・外製化の判断基準となります。開発するシステムの規模にもよりますが、一般的にITシステムの設計・実装に要する期間は数日から数か月単位であり、人材の採用・育成コストやインフラへの設備投資費用を考慮すると、外製化の方がコストを抑えられます。しかし実際は、ITシステムの保守・運用は年単位の期間で考える必要があり、自社のIT人材を採用・育成することにより、外製化よりも中長期的な管理コストを抑えられる可能性があります。設計・実装といった短期間の開発業務であれば外製化を優先し、保守・運用などの中長期的な管理業務は内製化するなど、対象や状況に応じて柔軟に判断していくことが大切です。

業務内容

対象の業務が何であるのかも内製化か外製化かを判断する材料のひとつです。例えば、自社の企業価値に直結するコア業務には内製化が適しています。コア業務の外製化は、企業にとって重要な資産であるナレッジやノウハウの流出につながり、自社ならではの競争優位性を喪失するリスクを含んでいます。
つまり外製化に適しているのは、どの企業でも行われているような、ルールや手順がテンプレート化された業務です。請求書の作成や問い合わせへの対応といった定型業務は直接的な売上への貢献度が低く、このような業務を外製化すれば、コア業務に投入するリソースを最大化できます。

システム開発・運用はアウトソーシングが効率的! そのメリットとは

システム開発・運用はアウトソーシングが効率的! そのメリットとは

自社のコアビジネスに対して効率的に経営リソースを投入するためには、ノンコア業務のアウトソーシングが有効です。特にITシステムの開発・運用は多くの企業にとってノンコア業務であり、外部に委託できれば、自社の人的リソースや資金をコア業務に振り分けられます。ITシステムの開発・運用をアウトソーシングする主なメリットは以下に挙げる3つです。

プロフェッショナルのサービス

まず、情報技術のプロフェッショナルに自社ITインフラのマネジメントをまかせられる点が大きなメリットのひとつです。ITシステムの保守・運用は内製化によって中長期的な管理コストを抑えられるものの、そのリソースを自社で賄うことは容易ではありません。外製化することにより、コア業務にリソースを集中できると同時に、情報技術の専門家がインフラストラクチャを運用・管理してくれることで、安心してITシステムを利用できるようになります。

会社の生産性維持

生産性の維持・最大化は、企業にとって非常に重要度の高い経営課題です。生産性を向上させるためには、いかにして最小のリソースで最大の成果を上げるのかが重要です。ITシステムの開発・運用をアウトソーシングできれば、人的リソースをインフラストラクチャの保守や管理に回す必要がなく、コア業務にリソースを集中できるため、組織全体の生産性の維持・向上が期待できます。

マルチクラウドにも対応

近年はクラウド型の運用基盤を優先的に検討するクラウドファーストが一般化しつつあり、クラウドコンピューティングの戦略的活用を推進する企業が少なくありません。しかし、一般的にクラウド型はオンプレミス型と比較してカスタマイズ性に劣ります。したがって、自社の要件を満たすために複数のクラウドサービスを併用する方法、つまり「マルチクラウド」を選択する企業が増えつつあります。
マルチクラウド環境のデメリットは、管理負荷の増大や運用の複雑化を招きやすい点です。そこでマルチクラウド運用・管理をアウトソーシングすれば、クラウドサービスの併用にともなう課題やリスクを効率的に解消することを目指せます。

運用属人化を解消! Y2Sのアウトソーシングサービス

ITインフラの運用・管理を外部に委託したいと検討しているのであれば、Y2Sのアウトソーシングサービスをおすすめします。Y2SではITシステムやインフラストラクチャの運用・監視サービスを提供しており、24時間365日の有人監視によって障害や異常を迅速・的確に検知します。仕様変更を伴わない範囲内で、各種設定や登録内容の変更などにも柔軟に対応しています。

まとめ

内製化とは、外部に委託していた特定の業務を、自社の経営リソースで行うように切り替えることを指します。一方、特定の業務を外部に委託することを外製化と呼びます。例えば、ITシステムの開発・運用を内製化すれば、ナレッジの蓄積や開発速度の向上、柔軟な対応といったメリットが得られます。しかし人材の育成に時間がかかったり、コア業務に投入できる人的リソースが減少したりといったデメリットもあります。
ITシステムの開発・運用はあくまでも手段でしかなく、本質的な目的はデジタルソリューションの戦略的活用による企業の持続的な成長と発展です。内製化と外製化にはそれぞれ一長一短があり、どちらを選択するかは自社の組織体制やシステム環境を考慮して判断する必要があります。経営リソースの効率的な運用を目指しているのであれば、Y2Sのアウトソーシングサービスの導入を検討してみてください。