クラウドサービス(SaaS)のメリットとデメリットとは??

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2023.07.14
クラウドサービス(SaaS)のメリットとデメリットとは??

近年、多くの分野でデジタル技術の戦略的活用が重要課題となっており、クラウドサービスを導入する企業が増えています。しかし同時に、クラウドサービス導入による運用負荷の増大に悩まされている企業も少なくありません。本記事ではクラウドサービスのメリットやデメリットを解説し、運用負荷を軽減する具体的な方法を紹介します。

クラウドサービスとは

「クラウドサービス」とは、さまざまなソフトウェアやデータなどをインターネット経由で利用できるようにするサービスです。インターネット接続環境とパソコン・タブレットなどの端末、Webブラウザなどがあれば利用可能です。つまり自社でサーバーを設置したり、専用システムを構築したりする必要はありません。

クラウドサービスには、ソフトウェア機能を提供する「SaaS(Software as a Service)」、サーバーやストレージ、ネットワークなどのITインフラ機能を提供するIaaS(Infrastructure as a Service)、アプリケーション実行用プラットフォーム機能を提供する「PaaS(Platform as a Service)」といったものがあります。単にクラウドサービスと言った場合、SaaSが意味されていることが一般的です。

なお近年は多くの企業・組織で、クラウドファーストという考え方が一般化しつつあります。実際、総務省の調査によるとクラウドサービスを利用している国内企業の割合は70.4%となっています。

参照元:総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」p.18
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf#page=29

オンプレミスとの違い

「オンプレミス」とは、サーバーやネットワーク、ソフトウェアなどのITインフラを自社内に用意して運用する方法です。オンプレミスでは、基本的にシステムをゼロから設計・実装するためカスタマイズ性が高く、自社のビジネスニーズに最適化された独自のシステムを開発できます。自社運用のため、厳格なセキュリティポリシーを定義でき、セキュリティ面に優れる点もオンプレミス型の特徴として挙げられます。

クラウドの種類

クラウドの種類

大きく分けるとクラウドサービスには「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の2種類があります。パブリッククラウドでは、サービス事業者が提供するコンピュータリソースを不特定多数のユーザーと共同で利用します。プライベートクラウドは、企業や自治体などの組織が独自に構築して利用するクラウド環境のことです。組織外ユーザーの利用を想定する必要がないため、自由にカスタマイズ可能です。

なおプライベートクラウドにも、ホスティング型とオンプレミス型とがあります。ホスティング型では、外部事業者に提供してもらうインフラ上に自社専用のクラウド環境を構築します。それに専用回線やVPN経由でアクセスし、利用します。オンプレミス型は、自社自身が所有者となるインフラを用意し、そこに独自のクラウド環境を構築する方法です。

クラウドサービスのメリット

クラウドサービスでは、業務に必要なハードウェアやソフトウェアをインターネット経由で利用できます。自社にサーバーやネットワーク機器、電源装置、冷却設備などのITインフラを整備する必要がなく、ハードウェアの導入費用やITインフラの管理コストなどを削減できるといったメリットがあります。

さらに、業務に必要なデータをクラウドサービス上で一元管理できるため、メンバー間での情報共有が容易である点もメリットとして挙げられます。また、インターネット接続環境と端末さえあれば利用できるため、従業員たちが時間や場所に縛られることなく業務を行える点もメリットのひとつです。

クラウドサービスの現実! デメリットとは?

数多くのメリットがあるクラウドサービスですが、業務での利用を考えた場合、デメリットもあります。以下では、クラウドサービスの主流ともいえるSaaSを念頭に置きながらデメリットを解説します。

ネット環境の整っている場所しか利用できない

ネット環境の整っている場所しか利用できない

クラウドサービスのデメリットとしてまず挙げられるのは、「インターネット接続環境がなければ利用できないこと」です。しかも十分な通信速度や帯域が確保されていなければ、レスポンスが低下し、サービスの利用に支障をきたすこともあります。

時間や場所を問わず利用できるクラウドサービスですが、例えば従業員が外出先で公衆無線LANやモバイルWi-Fiを利用してしまえば、セキュリティやパフォーマンス上の問題が生じます。つまり従業員たちは基本的に、「セキュリティ対策が万全で、かつ十分なパフォーマンスを発揮可能な通信環境」を選択して、クラウドサービスを利用しなくてはなりません。

システム障害時に対応できない

SaaSなどのクラウドサービスでは、原則としてサービス事業者がインフラを管理しているため、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などの保守・運用はユーザーである企業や組織が行う必要はありません。これは重要なメリットではありますが、その分、サーバーダウンやネットワーク障害が発生した場合、ユーザー側では直接対応できないことも事実です。したがって自社システムの復旧状況が、ほぼ「サービス事業者次第」とならざるを得ません。企業にとってこれは大きなデメリットです。

加えてサービスのバージョンアップやシステムメンテナンスのスケジュールも、サービス事業者が決定します。その間は自社の都合に関係なく、システムの利用が制限されることもデメリットとして挙げられます。

自社システムとの連携が難しいことも

クラウドサービスは提供される機能や設定の範囲でしか利用できず、オンプレミスと比較してカスタマイズ性に劣ります。例えば、「自社で独自に組み上げている既存システムを、新規クラウドサービスと連携させて活用したい」といったケースでは、その目的に応えられるクラウドサービスを見つけられないこともあります。SaaSでは特に、各クラウドサービスの連携可能な範囲やカスタマイズ可能な範囲はあまり広くないため、個々のユーザーが持つ独自なニーズには対応できない場合も少なくありません。

セキュリティリスクがある

SaaSは基本的にパブリッククラウドのサービスとして提供されるため、セキュリティリスクを懸念する声が少なくありません。SaaSを利用するにあたって、IDやパスワード管理、アクセス権限設定、ログの監視、機密データの取り扱いなどに関して厳格なセキュリティガバナンスを確立しておかないと、情報漏洩などを引き起こす可能性もあります。

こうしたセキュリティリスクについて対処する必要性が生じる点は、クラウドサービス利用のデメリットのひとつです。対処方法としては、例えば「機密性の高いデータについてはオンプレミス環境に保管し、クラウドサービスから完全に隔離させる」などの手段も代表的です。

クラウドの最も大きな課題は運用負荷!

クラウドの最も大きな課題は運用負荷!

SaaSなどのクラウドサービスを利用するなら、自社でITインフラを整備する必要は基本的にありません。それらを適切に運用することでシステムの運用・管理コストは削減できます。

一方、「インターネット接続環境さえあれば利用できる」という手軽さから、事業単位や部署単位で個別にSaaSや他クラウドサービスの導入が進められてしまうことも懸念されます。このように社内の各所で複数のサービスが積極的に導入され過ぎた結果、運用・管理の負荷がかえって増大してしまうおそれが膨らみます。このような状況を放置すれば、運用負荷が増大し続けてしまいかねません。

システムの運用負荷増大に対する解決策とは?

クラウドサービス利用による運用負荷を解決するには、運用のアウトソーシング、運用の自動化・可視化、クラウドサービスの見直しといった方法が考えられます。

運用のアウトソーシング

先述したように、SaaSは導入が容易な分、各部門や各従業員が独自に導入・運用しているケースも少なくありません。このように、企業・組織の情報システム部門が関知せずに利用されているサービスやデバイスはシャドーITと呼ばれ、データの消失やセキュリティインシデントの要因となる危険性を含んでいます。こうしたリスクが解消されないままクラウドサービス数が増加し、その管理・運用面もますます煩雑になっていけば、将来的に甚大なトラブルを引き起こす可能性につながります。

こうした事態を回避し、システムの運用負荷を軽減する方法として、当該業務をアウトソーシングすることも有効です。専門の知識や経験を豊富に持つエンジニアや事業者に、自社システムの保守・運用を任せられます。適切な管理を受けることによりセキュリティリスクを軽減しつつ、自社自身の負荷軽減を図れます。

運用の自動化・可視化

中小企業であれば、システムの運用負荷軽減策として、上述したアウトソーシングがおすすめです。加えて大規模なITインフラを管理している企業であれば、運用の自動化を支援するソリューションの導入も選択肢のひとつです。例えば、SaaS型クラウドサービスとして提供されるIT運用管理プラットフォーム「OpsRamp」は、既存システムとの連携やリソースの自動化・可視化を支援し、システム運用を効率化できます。OpsRampの詳細については以下のURLをご覧ください。

SaaS型IT運用管理プラットフォーム「OpsRamp

クラウドサービスの見直し

システムの運用負荷増大を解決するためには、「利用しているクラウドサービスが自社業務のニーズに合致しているのか」を見直すことも必要です。既存の業務プロセスを洗い出し、必要なシステムやアプリケーションを明確にして、利用するクラウドサービスを厳選すれば、運用負荷の軽減を図れます。そのうえで保守・運用のアウトソーシングや自動化・可視化を支援するソリューションの導入を検討することが大切です。

Y2Sのアウトソーシングサービスの紹介! 導入から運用までワンストップのサービス

Y2Sでは、システムの導入から運用までを総合的に支援するアウトソーシングサービスを提供しています。ここではY2Sのアウトソーシングサービスを利用し、システム運用負荷の軽減に成功した企業事例を紹介します。

詳しくはY2S導入実績事例をご覧ください
運用監視サービス 株式会社Y2S

事例1: ネットワーク基盤の運用負荷を軽減

サーバー約100台とネットワーク機器約50台を保有する大手キャリア・A社では、IT人材の不足によってネットワーク管理やアクセス制御に人員を割けない状況となっていました。Y2Sでは、通常のシステム運用管理に加え、ネットワーク設計や作業設計といった業務の運用サービスを提案しました。併せてY2Sが主体的にシステムの保守・運用を展開した結果、A社の運用負荷を大きく軽減することができました。

事例2: 適切な運用監視サービスの提供

医療・介護関連のビジネスを展開しているB社では、自社運営の医療系ポータルサイトに遅滞が発生しており、サービスの安定化を図ることが課題でした。Y2SではB社の担当者に詳細なヒアリングを行い、サイトの状況を整理して、パフォーマンスに関する調査・解析を実施しました。その結果、運用体制などの見直しと適切な運用監視サービスの提供、リソースの利用状況を把握したうえでのボトルネックの特定などを提案し、標準運用監視サービスやWebパフォーマンスツールなどの提供で課題の解決を図っています。

まとめ

クラウドサービスとは、ソフトウェアやデータなどをインターネット経由でユーザーに提供するものです。クラウドサービスは物理的なインフラストラクチャを構築する必要がなく、導入費用と管理コストを削減できる点が大きなメリットです。さらに情報共有の容易さや、「インターネット接続環境さえあればどこからでもアクセスできる」という利便性の高さも、クラウドサービスが普及する要因になっています。

障害が発生した場合の対応やシステムの運用・管理では、技術的なスキルが必要であることは当然ですが、業務効率化やコスト削減といったクラウドサービスのメリットが大きいことも確かです。このメリットを活かし業績向上を狙えるよう、「自社ではどんな運用・管理上の課題が生じる可能性があり、どう解決すべきか」を冷静に検討しつつ、クラウドサービスを適切に利用しましょう。